つかさの自由帳

140文字では伝えきれないこと:自由について本気出して考えてみた


僕の恋愛奮闘記~だって童貞だったから~

金融日記262号を読んでいると、ふとこんな文字が目に飛び込んできました。

 
僕にとって大切な「初めて」をなんで風俗ごときで捨てなきゃいけないんだ
【中略】
絶対に素人女で童貞を捨ててやる!
 
僕はこれを読んだ時、激しい動悸を覚え、めまいに襲われ、気づけばサイバイマンの自爆攻撃を受けたヤムチャのように地面に這いつくばっていました。
 

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というのも僕の「初めて」には今まで誰にも言うことができなかったほろ苦い思い出があるからです。今日はそんな僕のちょっぴり切ない青春時代の話をしたいと思います。ちなみに甘酸っぱさは全然ありません。ただただ苦いだけのお話です。
 
 
大学1年生の夏休み、僕は僕を含めた友人たち6人でタイ旅行へ出かけました。具体的な行き先は特に決めていませんでしたが、バックパッカーの聖地と言われるカオサン通りに拠点を構え、タイ料理を楽しみ、ビーチで泳ぎ、そして観光地へと足を運びました。それはそれはとても楽しい思い出で社会人となった今でも美しい思い出として鮮明に記憶に残っています。
 
しかしそんな楽しい旅行にもひとつ問題がありました。
 
 
そう夜の遊び方です。
 
 
僕たちのグループの童貞率は50%、つまり僕を含めた3人がピッカピカの童貞でした。金融日記の投稿にあった通り「初めては絶対に好きな人」という鉄の不文律を持つ僕たち童貞は、まさかタイの風俗で「それ」を卒業することなんて考えてもいません。
 
もちろん非童貞たちが風俗に行くのを止めるほど野暮ではありませんでしたが、ここで一悶着が起きます。
 
 
 
 
 
「そんなもん(=童貞)大事にとっておいても仕方ないだろ、ここで3人とも卒業しちまえよ」 
 
 
 
そうのたまったのは既に童貞を卒業していた相沢君でした。そして他の非童貞たちもその発言に便乗し囃し立ててきます。
 
なんて無礼な奴らだ。と僕たち(童貞)が憤りを覚えたのは当然でしょう。これは辛い童貞時代を過ごしてきた方々には理解いただけると思うのですが、非童貞が童貞に風俗を勧めることはすなわち戦争を意味します。そこにはただならぬ空気が漂い始めていました。
 

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ところで非童貞組には田町君というのはちょっと頭の弱いみんなのいじられキャラがいました。外見もベ◯ースターラーメンのパッケージのようなヤツで、とろくさいけど愛嬌のある憎めない友人でした。当然、彼が童貞を卒業するのは仲間内で最後だろうと目されていたのですが、驚くことに彼は3番目に童貞を卒業してしまったのです。
 
想像してみて下さい。普段からちょっと小馬鹿にしていた友人が、自分よりも早く童貞を卒業することの恐怖を。僕たちの仲は依然として良好なままでしたが、そこには絶妙なパワーバランスが生まれていました。
 
※田町くんのイメージ画像

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話を戻します。風俗に行く行かない論争は膠着状態に陥っていました。まさかここで童貞を失うわけにはいかない僕たち(童貞)、そんなのはお構いなしの非童貞、この膠着状態を打ち破ったのはまさかのベビースター田町君でした。
 
彼はおもむろに立ち上がると僕たちを見下ろしこう言ったのです。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「童貞なのが悪いんだろうが!」
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僕たち(童貞)は耳を疑いました。
 
 
「童貞が悪い」
 
 
社会人となった今でも、こんな差別的な発言は聞いたことがありません。僕たちだって好きで童貞をやっているわけじゃありません。運命が外見がいや女が悪いんや。
 
ましてや普段は上から目線で小馬鹿にしていた田町君から言われたのです。その時の衝撃はいかばかりか、怒るでもなく言い返すでもなく、ただただ狼狽えるのみでした。
 
「ご、ごめん」
 
気づけば僕は謝っていました。
 
もう後には引けません。僕たちはとりあえず現場を見るだけならという条件で風俗街へとタクシーを走らせました。頭の中はまさかここで童貞を捨てるわけないよなという思いと、初めて触れる生のエロに対する期待と不安で、ぐちゃぐちゃになっていました。
 
さて風俗街へ降り立つといきなり試練が訪れます。なんと風俗嬢と思しき背の高い美女が僕の手を握ってくるではありませんか。
 
当時英語ができず、童貞だった僕は完全にテンパりました。ふと友人たちに目を向けるとにやにやしながら、遠巻きに冷やかしてきます。そして冷やかしてきたと思ったらあっという間に風俗街へと消えていきました。そう、僕は見捨てられたのです。あれだけ童貞卒業を煽られたのに。 
 
 
さて、そんなことはお構いなしに、隣の美女は耳元で囁きます。
 
「Go with me tonight」(今夜は私と一緒に過ごしましょう。)
 
当然のように僕は返します。
 
「I, I, I am a cherry boy」(ぼ、ぼ、僕は童貞です。)
 
冠詞のaは必要だったっけ?今、童貞は一人だしな、とか文法の正確さにこだわりながら、僕は自分が童貞であることを告げました。
 
こう言えばさすがのお姉さんも童貞の純潔を慮って、手を引いてくれると思ったのです。しかし返ってきた言葉は僕の予想を裏切るものでした。
 
「I will teach you」(教えてあげるわ。)
 
 
 
 
 
 
再びここで話が脱線して恐縮ですが、僕は飛行機恐怖症です。初めて乗る航空会社は必ず安全度ランキングを確認しますし、精神安定剤も持っています。今も年に数十回は仕事で飛行機に乗っていますし、飛行機が落ちることなんて数百年乗り続けて一度あるかないかということも理解しています。しかし怖いものは怖いのです。
 
なんでこんな話をしたかというと、このタイ旅行の最中もずっと僕の頭には死の恐怖がつきまとっていたためです。つまり日本に帰る飛行機にもしものことがあった場合、僕は童貞のまま生涯を終えることになる。それだけは避けたいという思いがありました。
 
普段僕は論理的でない人や科学的でない人を馬鹿にしていますが、本当はそんな資格はありません。なぜならこの時の僕は「童貞のまま死ぬ」というリスクを過大に見積もり、「タイの風俗で童貞を捨てること」のハードルをとてつもなく下げていたからです。
 
 
 
 
この死への恐怖と隣の美女の誘惑、その絶妙な合わせ技で、気づけば僕は見知らぬホテルの一室にいました。部屋の照明は薄暗く、広さはベッドがようやく一台置けるかどうかといったところです。
 
 
 
さてわけも分からず導かれるがままにコトが始まりました。正直なところ詳細はよく覚えていません。しかしお姉さんが気を使ってかカタコトの日本語で
 
「キモチイイデス」
 
と言ってくれたことだけは覚えています。そしてその瞬間、ものっそい後悔が押し寄せてきたことも。
 
あぁやってしまった。僕はあれほど固く守り抜くと言っていた童貞をあろうことか見知らぬ国の見知らぬお姉さんにカタコトの日本語とともに捧げてしまったのです。しかもお金を払って。このことが友達にバレたらなんと言われるだろうか。
 
さて全行程を15分程の神速で終了した僕は、しばらくホテルの前でもわっとした空気を浴びながら呆然自失としていました。そしてなんとか気を取り直した後、友達に連絡を取りました。
 
 
 
 
「お前、何処言ってたんだよ。もしかしてあのお姉さんで童貞捨ててきた?笑」
 
 
迎えに来てくれた童貞仲間の鈴木君の言葉には「まさかそんなわけないよな」というニュアンスがこもっていました。
 
 
「そ、そんなわけないだろ、丁重にお断りしてきたよ。」
 
 
彼の期待に沿うように僕は嘘をつきました。「はじめては絶対に好きな人」という信仰を破った今、それがバレればいじめられます。僕は必至の思いで愛想笑いを浮かべました。しかしそんな薄気味悪い僕の笑顔も次の鈴木くんの一言でいっきに消え失せます。
 
 
 
 
 
 
 
 
「だよね。あの人めっちゃ喉仏あったしね笑」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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ヤッてる最中に気づくだろ、というのは今だから言えることであって、当時の僕は初体験の相手がニューハーフだろうと、あそこにあるアレが人工的なものであろうと、知る術はありませんでした。
 
 
 
 
 
だって童貞だったから!
 
 
 
 
 
 
恋愛工学は確かに禁断の果実かもしれません。しかし僕がアダムとイブと異なるのははじめから楽園を追放された身だったということです。禁断の果実を口にすることでしかこの残酷な世界を生き残る術はなかったのです。
 
この記事はなんらかの理由で既に楽園を追われている人たちに捧げます。あーめん。
 
 
 
画像引用:
鳥山明:ドラゴンボール、福本伸行:賭博黙示録カイジ、久保帯人:BLEACH、おやつカンパニー